World > Africa > Guinea

Artist

HOROYA BAND

Title

PAYA - PAYA


paya-paya
Japanese Title

国内未発売

Date 1970s
Label DAKAR SOUND 2003290(NL)
CD Release 1997
Rating ★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 ギニア幻のバンド、待望の初CD化。ケレチギ・トラオレの項で述べたように、58年に独立したギニアは、セク・トゥーレ大統領の指導のもと、ギニア(とりわけマリンケ)の伝統文化保護政策を打ちだした。地方でのコンテストを勝ち抜いた音楽家たちは、首都コナクリでの本選に出場し、勝者には国立バンドの称号が与えられた。バンドのメンバーは政府から給料と楽器をもらい、政府が運営するレーベル、シリフォン(SYLIPHONE)からレコードを出した。
 サックス・プレイヤー、メトゥーラ・トラオレ率いるホロヤ・バンドは、1964年、ギニア北東部にある町、カンカン(カンテ・マンフィーラの“カンカン・ブルース”で有名になった)で結成された。68、69、71年の3度、ナショナル・フェスティバルで第1位を獲得し、71年12月、ついに“ナショナル・オーケストラ”となった。

 本盤は、シリフォンから出たかれら唯一のオリジナルLPと、コンピレーション・アルバムやシングルをもとに、代表曲'PAYA-PAYA''WERE-WERE'を含む全12曲構成。録音年ははっきりしないが、70年代前半からなかばごろだろうか。12曲目の'N'BANLASSOURO'のみはラテンの影響がモロだから、おそらくもっとも古い音源だろう。そのほかは一部の曲でリズムや楽器の使い方にラテンの影響が見え隠れするものの、ベースにはアフリカの伝統音楽がある。
 ハイハットが刻むハチロク(8分の6拍子)特有のポリリズミックなビートに、トゥンバやコンガといった打楽器がダイナミックなアクセントを与え、そこにファズを効かせたバラフォン・スタイルのギターがからむ。ヴォーカルやコーラスは、吐き捨てるようで、どこかあか抜けないが、それがかえって味になっている。トラオレのサックスを中心としたホーン・セクションは、例によって、合ってるんだか合っていないんだかよくわからないアフリカ的な野趣にあふれたコーラスを聴かせてくれる。バラフォンを用いた曲も何曲かある。70年代の典型的なギニアン・スタイルという感じだが、ベンベヤ・ジャズほどの華麗さや妙味はなく、トラオレのソプラノ・サックス・ソロが象徴するように、ダイナミックななかにも温厚で朴訥な印象がある。

 そのいっぽうで「隣国マリのサリフ・ケイタの音楽を素朴にしたような雰囲気もあるなあ」と思っていたら、案の定、トラオレは、マリンケが人口の30パーセントをしめるギニアでは少数派だが、マリでは多数民族であるバンバラの出身(サリフはマリンケ出身)。ホロヤ・バンドを旗揚げしたカンカンという町はマリの国境に近いことから、ホロヤ・バンドのサウンドの原点には、やはりマリの、というよりバンバラの音楽があると見てまちがいないだろう。
 ところで、アルバム・タイトルにもなっているかれらの代表曲'PAYA-PAYA'は、バンドのメンバーがリーダーのトラオレに捧げた曲で、トラオレのニックネームであるPAPA PAYA-PAYAからとったもの。PAYA-PAYAとは、“導きの光”という意味だそうだ。きっとメンバーからの信頼も厚い人望にすぐれたひとだったのだろう。


(5.9.02)



back_ibdex

前の画面に戻る

by Tatsushi Tsukahara